一般社団法人 岐阜県林業経営者協会

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2012年5月号

銘木への誘い                     桑原善吉のぼやき

銘木とは

欅の玉杢
欅の玉杢

 この度は銘木を題材とするが、私が深く関わる業態であるが故に、優れた木材の価値をもっと周知させたいという想いからの主張である。

そこでまず銘木とは、「茶室や社寺建築に使われる高価で特別なもので、一般にはあまり縁のない木材」とお思いではないか。確かに、数百年を経た高齢材や、人の背丈を上回る太さの大径木、また杢模様が特異で美しいものなどを銘木と称し、その希少価値故に付加価値も付いている。しかし、つい先頃までは日本人には身近な類であって、新築すれば、和室の床柱や床渕、天井板などに必ず使われてきた。施主にとっては其のお宅の自慢の種、見所として、大いにこだわりをもって吟味されたものである。

銘木市場の現況について

栃のチヂミ杢
栃のチヂミ杢

 銘木はその特殊性もあり専門の市場(銘木市場)での取り扱いが多く、その付加価値を求めて全国から荷主や買主が集い、売買される。其の銘木市場の中でも今、取扱高が一番なのがご当地の岐阜県銘木協同組合で、全国各地より、主となる欅・杉・栃のほか多種多様に出品される。ちなみに今の岐阜銘協の花形は、栃に代表されるテーブル用材である。木肌を両袖に残した自然味ある形で出品され、特に白地に杢のある商品は高値で落札されている。そこでもし、古木や大木等をお持ちの方は、お近くの銘協市場へご相談されることをお勧めする。

しかし、銘木業界もデフレ経済の長期化や建築様式の変化に伴い、品種によっては需要が大幅に減少し、価格も相当に下がっている。また、銘木の専門性故に、一つ一つの商品価値が異なることから同様な商品でも価格幅に相当の違いが生じて、購入者が妥当な価格を理解しづらい。そして商品流通に閉塞感もあり、建設会社や設計士も含めた消費者への情報提供が希薄であることも大きな課題と考える。今後はこの課題をいかに克服するかが銘木の将来を左右する事となるだろう。

銘木がもたらす和の心

30年の欅
30年の欅

 我が家は平成になって増築したが、母屋(築200年以上)と同様の在来工法を踏襲した和風住宅である。理由は母屋が実証するとおり頑丈で、安心して暮らせるからである。欅の大黒柱が家を支え、200年以上の時を紡いだ年輪が織りなす杉天井の杢目は美しく、和のテイストが心地よく私の気持ちを癒してくれている。

 海外に行くと、その国の伝統と文化を継承した住まいに巡り合うが、残念ながら近年の日本の住宅は生活スタイルや価値観からか、何処の国の建物なのか解からない様相のものが多くなっている。日本人として、和のこだわりを持った住宅づくりの術として今一度銘木を見直し、利用されることをお勧めしたい。銘木は自然が創造した唯一無二のもの、オリジナリティーある日本人の住まいが出来る事は間違いない。折しも、相当にお値打ちとなっている今、日本の銘木が海外でも注目され、希少価値の高い商品等は中国人が高い関心を示している。

父親が30年程前に欅を植え、今逞しく育っている。私も、硬くて丈夫で腐らず、そのうえ杢目が美しいこの木が大好きである。銘木と呼ばれる迄には少なくとも170年も後のこと、後継者に夢を託したい。