2012年1月号
弊社では、平成21年度より岐阜中央森林組合と共同で「円原森づくりプロジェクト」(以下「円原森プロ」)を行っている。施業地の山県市円原万所地区に一族で所有する約50haの山林を中心として集約化を実施し、作業道を年間500~1,000m敷設して約1,000㎥の木材生産をしている。施業地は急峻な地形が多く、路網整備はあまり進んでおらず、また既設の市道はあるが幅員が狭く大型トラックは入れない。その為50年生以上のスギの植林地が多いものの現場はあまり動いていなかった。
そこで「円原森プロ」では悪条件でも効率的な施業を目指し、以下のような施業を行っている。
「円原森プロ」2年目のフォローアップ委員会で委員に21年度に造った作業道と利用間伐施業地を見てもらい、「選木方法が不適切で健全な山づくりになっていない」との猛烈な指摘を受けた。フォローアップ委員会の考えでは、間伐は将来優良木を収穫するために行うもので、そのために不良木を除去し、林内に光を入れて、優良木の生長を促すべきという意見であった。また後日他の施業地を見て頂いた時に、林内に雪害木が林地残材として残っており、パルプ材としての販売を検討するようにとの意見も頂いた。
逆にフォローアップ委員会のメンバーに「あなたならこの施業地でどの様な施業を行うか」と質問をしたところ「それは自分たちで考えなさい」との回答であった。間伐方法が不適切と指摘してきながらこの回答では、コストと森林整備のバランスを考えた指摘でないと確信した。現場毎におかれている状況は違い、理想的な最終林型を追い求めるだけでは、林業経営は成り立たない。フォローアップとは現場毎におかれている状況を鑑み、その上でどうするかをアドバイスする事ではないか?この厳しい時代を林業という決して見通しの明るくない業種で生計を立てようと我々は必死であるのに、これでは議論が噛み合うはずがない、と実感した。
「円原森プロ」施業地の多くは間伐が遅れており、下層植生が乏しく、表土が露出した状態になっている。私たちは間伐について下記のような方針で施業している。
①1回目の間伐は列状間伐により林内に光を入れつつ、可能な限り不良木除去を行い、林内に光が入るようにする。
②雪害木や被圧木など、搬出しても採算が合わない材は林内に集積する。
③作業道が入っている高齢級林分では不良木の除去を中心に間伐を行う。
不良木除去だけでは材価が厳しく、また搬出経費がかかる為に商売として成り立たない。間伐の目的を理解して、森林所有者の理解を得た上で、収支のバランスを保つことが必要であると考えている。
「真に豊かな森づくり」とは、森林所有者と私たち林業経営者の双方が満足できる森づくりだと考える。森林所有者の望む山に少しでも近づけるように所有者とよく話し合い、林業経営者として収支のバランスを考えた施業提案をしていきたい。そして委員会に対しても「理想」と「現実」の狭間のギリギリの環境下で林業経営を強いられている現状を理解して頂き、理想論だけでは生計は立てられない、ということを正々堂々と主張していきたい。