一般社団法人 岐阜県林業経営者協会

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        巨木  淡墨桜            小澤建司のぼやき

    ~淡墨桜と共に生きるという事を考える~

淡墨桜伝説

       大正11年の淡墨桜
       大正11年の淡墨桜

私の住んでいる村に、国指定天然記念物の淡墨という桜が根を下ろすこと1500年。

 毎年、この桜は何万人という観光客を迎え、満開の花が人を魅了している。この桜にはいろいろな言い伝えがあり、「継体天皇お手植え説」や「真清探當證」などがある。歴史的な淡墨桜は書物などから情報を集められるが、少し違った方向から淡墨桜を見てみたい。

淡墨桜の秘密

 淡墨桜にも再生プランがあり、それは今、正に実行中である。枝と根には全て番号が付けられていて、データ管理されている。平成18年には根からの栄養吸収が不十分だったので、全ての土壌を栄養化の高い土壌に入れ替えて根を伸ばす計画を立てた。そして、平成18年移行徐々に根が確実に伸びていることが確認されている。

 また淡墨桜の幹は、人が3人入れるくらいの大きな穴が空いていて、その幹の真ん中には支柱が設置されている。樹木は形成層で養分を吸収しているため、幹が空洞でも生きていく上では支障はない。しかし、あの大きな桜は自分自身で枝を支えることが出来ず、人の力を借りずしてはもう生きていけない。そんな桜の幹を強くする計画も実行されている。

 あの大きな幹は実は枝なのか根なのかが不明で、数えられないくらいの不定根が確認できる。その不定根を地面に下ろすため、幹の空洞部分に竹筒を7本設置して、不定根を竹筒で地面に誘導させた。この根を太くし、空洞の幹を根で覆い尽く計画である。この計画も第一段階は成功し現在、竹筒は朽ち果て根は直径8㎝程度まで成長した。平成25年、3月には3番枝の腐食を取り除き、ウレタンを吹き付け、FRPを貼り付け修復を完了させた。現在の淡墨桜はこの状態で元気に生きている。

        淡墨桜管理図面
        淡墨桜管理図面
     腐食した竹筒から飛び出した不定根
     腐食した竹筒から飛び出した不定根

生きる意味

 私が見る淡墨桜は、ご老体で傷だらけ、人の力を借りなくては生きていけない。人も全精力を使い、この桜に生命を与え続ける。ここまでして、この桜に花を咲かせ、守って行く意味があるのだろうか?生きているものには必ず死が訪れる。そんな巨木、淡墨桜の存在を考えてみる。

 林業の目線から木を見ると、伐採時、材木としての価値を高めるため、より大きくより太く良質な木を育てる。だからこその木を大木にする努力は惜しまない。

 しかし、淡墨桜はそれに当てはまらない。材として価値は言うまでも無い。年に一回、花を咲かせ種子を付ける事に全勢力を使い、1500年の歴史で誰よりも長く、その場所の空を眺めて続けて来た。

 そして、毎年春に満開の花で人を迎える。桜自信、人に花を見せるためだけで生きている訳ではないはずで、誰にも理解する事はできないが、必ず生きていく訳があるのに違いない。

 それはまた、人も同じでは無いだろうか。その人にはその人の生きている意味がある。その意味を自分自身で理解するのは難しいと思うが、理解するために考え、努力し続けるしか無いのだろう。淡墨桜は何のために生きていて、人は何故生きていくのだろうか。答えは無いかもしれないが自分で答えを出すしかない。

 そのためにより長生きをし、大地にしっかりと根を下ろし、力いっぱい花を咲かるよう、淡墨桜を見習い目指すべきである。一度、淡墨桜に会いに来て感じて頂きたい。

       黒く薄墨色に変わりつつある淡墨桜
       黒く薄墨色に変わりつつある淡墨桜