2013年8月号
「森林財産復活への道」これが岐阜県林業経営者協会のホームページでもトップを飾っている、我々の大義である。もちろん「森林財産」とは木材そのものの価値、つまり伐った時にいくらになるか、という考え方がまず一番である。しかし森林には様々な価値があることは言うまでもない。
当社は岐阜県の他、岡山県の新庄村という人口900人の小さな村に約75年に亘り森林を保有している。その新庄村では森林を様々な形で活かそうとしている。
新庄村は平成の大合併時においても、周囲の村が真庭市となる中で自主独立の道を選択し、村長はテレビ番組の「笑っていいとも」の村自慢に出演するなど個性溢れる村である。そんな新庄村の一番の売りものは「豊かな自然」である。
大山隠岐国立公園特別保護区にある神秘的なブナの森は下流域に安定的に恵みを与えられるよう澄んだ水を蓄え、かつレッドデータブックに掲載されるような貴重生物の生息地となっている。
森に入れば、季節ごとに咲く花や葉の緑、せせらぎの音や鳥の声、木漏れ日の中を歩くことができる。そんな森の癒し効果を全身で体感できる豊かな森林が新庄村の売りであり、この売りを活かす為、新庄村では森林セラピーに取り組んでいる。
森林セラピーとは、医学的な証拠に裏付けされた森林浴効果をいい、森林環境を利用して心身の健康維持・増進、疾病の予防を目指すものである。具体的には、森の中に身をおき、森林の地形を利用した歩行や運動、森林内レクリエーションなどの方法によって、心身の快適性と保養効果を高める一歩進んだ森林浴なのである。
現在全国で53カ所あるセラピー基地であるが、新庄村は2008年4月に全国で24番目のセラピー基地として認定された。その基地の森は新庄村と当社がほぼ半分ずつを所有しており、両者が協力し合いながら認定まで汗をかいてきた。
現在、新庄村にはセラピーガイドをしている60歳代以上の方が30人程度いる。その方々はいつでもガイドができるように日頃より体を動かし健康管理を心掛けている。そして来村された方に楽しんで頂こうと植物や星の勉強、ホタルの絶景ポイントを探すなど毎日をワクワク過ごされている。セラピーは村民の生き甲斐となると同時に、高齢化の進む900人の村民の健康維持や医療削減につながり村にとってもメリットは大きい。
また新庄村はセラピーで更なる村の活性化を図るべく、国の交付金を活用しセラピー基地の整備に動き始めた。例えば車いすでも森を体感できる設備や、精神的な病気の方にも森を体感して頂けるようなメニューの整備し、将来的には処方箋による診療もできるシステムの構築を目指しているのである。
当社にとって自社の森林がセラピー基地に認定されたことは、材としての価値だけでなく自然環境的価値はもちろん医学的価値も認められたということで資産価値が向上したと言える。また、本年6月には全社員で新庄研修を行い、セラピー基地を始め自社の森林を見て触れて体感してきた。そんな体験を通じ「セラピー基地にもなるような森林を自社が保有していることを誇りに思う」という社員がほとんどであったことは、セラピー基地がもたらした当社にとって一番の価値であると私は考えている。
今後も新庄村と共に心も体も元気になれる森づくり・村づくり実践することで、「森は自然のお医者さん」をテーマに新庄村を益々メジャーにしていきたい。また当社としても様々な価値のある森林を残してくれた先人に感謝しながら、これからもこの偉大な森林を誇りとしていけるよう護り活かし続け「森林財産」の復活につなげたい。